ある日、夢を見ていた。


ひょんなことから実家に居着くことになった、白猫の夢。


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白猫は立っている私の右太ももの下あたりに両前脚をつけ、何かを訴えかける様にこちらを見上げていた。或いはにゃあと鳴いていたかもしれない。


周囲の情景は憶えていない。


久しぶりだなという感覚があったので実家だったのだろう。


珍しいな、抱っこして欲しいのかな、でも抱き上げたら嫌がるだろうな。


そう思いつつ、一度視線を外した。


再びせがむように白猫は両前脚に力を入れて太ももを押してくる。


視線を落とすと白猫は相変わらず物欲しそうにこちらを見ていた。ここでも鳴いていたかもしれない。


抱き上げられるのは嫌いなはずなのに珍しいものだ、と抱え上げる。


こんなに重たかったかなと少し戸惑いを覚えた。


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微睡みの中、白猫の柔らかな毛並みの感触とずっしりとした重さが手と腕に残っている。


ふと部屋の片隅に白猫の気配がした。慌しい音を立てながらこちらに向かってくる。白猫はそのままの勢いでベッドに飛び乗ると、右半身を下にして寝ている私の背に擦り寄るように丸まった。


温もりは確実にそこにあった。けれど、寝返りを打っても白猫を潰すようなことはない。寝返りは打たず、暫く温もりの余韻を背に感じていた。


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最期に見た白猫は前足を立てて座っていることすら儘ならぬ程に痩せ細っていた。


会いに行ったその日の夜、誰に気付かれる事なく静かに旅立ったそうだ。


夢を見た日はお盆に近く、きっと向こうで元気にやっているよと増えた体重を証拠に報せにやって来てくれたのだろう。